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元職員が郵便局を考える [読書(新書)]


佐滝 剛弘 著 : 郵便局を訪ねて1万局

六本木ヒルズのビルが、巨大なポストに変わりました。




自分が郵便局で働いていた頃よりも随分と、
プロモーションが変わってきたなぁと。

ただし給料はあいかわらず、低いようです。
認知力は抜群なのだから、こういった広告を貼るより、
社員のモチベーションのために、給料に還元するか、
お客様サービスを向上させればいいのに、と思うのは辛口でしょうか?

窓口の人員は減ってしまっているようです。
バイトに転用するならまだいい方。社員減というのが現実のようです。

お客様を待たせるのもやむなし、実質値上げもありのようです。
むしろ、社員減の実情から、利用客を減らし、
一人頭単価を上げる作戦のよう。なかなか寂しい限り。

客単価の向上 → 利用客の減 → 社員減へ対応


そんな中、こんな本を読んでみました。
みなさん、風景印って知っていますか?

郵便局を訪ねて1万局―東へ西へ「郵ちゃん」が行く (光文社新書 306)

郵便局を訪ねて1万局―東へ西へ「郵ちゃん」が行く (光文社新書 306)

  • 作者: 佐滝 剛弘
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2007/06
  • メディア: 新書

郵便物を利用すると、再利用されないように押されるのが消印。
その消印を、絵入りの押印として楽しむものが風景印です。

地域の特性を活かした風景印が多く、旅の思い出にもなるようです。
そんな風景印のファンの方が想いを書いた、そんな本です。

僕は元郵便局員、窓口で働いたことがあるため、
ファンの心理というものが実に興味深く感じられました。

また著者の郵政民営化に対する懸念が、自分の意見と似ていることに共感がもてました。

実は、僕も風景印を設置してある郵便局に数週間臨時で在籍したことがあり、
それを目当てにいらっしゃるお客様を目の当たりにしています。

こういったサービスは、実はそんなに採算が取れません。
出さない手紙(思い出用)に消印するのだから、
もうかるのでは?と思われがちですが、実はそうではないのです。

一日にひとり、ふたりのお客様のために、
職員が二人がかりで準備し、ミスのないよう確認し合います。
消印の不正(間違え)は、大変な事故です。
日付を間違えて設定してしまうと、「消印有効」といった期限付き取引などに影響が出ます。
具体的にいうと、受験書類などは、お客様の人生にかかわります。

以前、競馬結果を予想するといった(当たれば賞品がもらえるもの)懸賞があり、
職員が競馬の結果が出た日に答えを確認し、
消印をその前日にし、つじつまを合わせ、商品を根こそぎいただく・・・
といった不正があったそうです。
答えを知っているのだから、当然正解ですよね。職権乱用。ひとりタイムスリップ。

今はそんなことをしたら始末書、もしくは解雇です。

まあ話は逸れましたが、使わないという点を考慮しても、
準備のための見えない人件費がかかってしまっているのです。
使わないことで、原価(紙、印刷代)だけで、
売上げとして50円やら、80円もらえるとしても。。。

民営化のため、そんな風景印も減少の一途だそうです。
お客様サービスとは、利益重視ではありません。
そういった点も考慮に入れてほしいものですが。

たしかに、まだまだ民間社員になりきれていない地域の社員は多いと思います。
実際に、心無い職員から嫌な思いをされたかたもいるのでは?
(僕自身、お客としていった郵便局に憤慨したこともあります。)

しかし僕のいた周辺の職場は、本当に厳しく指導され、
民間並みにビジネスマナーはできておりました。
ご理解ください。

しかし、そういったマナー改善以上に深刻なデメリットがあります。
それは間違いなく、過疎化している地域で郵便局は減る ということです。
そしてさらなる過疎化をもたらします。

「あまねく公平に」という建前があった郵便局も、
儲かるお客様を重視するように、
お客様を差別するようになるでしょう。

競争で安くなると思われた郵便物も、価格の決定権が郵便局側になり、
値上げされるでしょう。

競争とは、通常、価格の決定権が消費者、利用客に移るのですが、
金融機関の場合は必ずしもそうではないと僕は思っております。

特にメガバンクの場合は、主導権はまだまだ銀行です。
現在の携帯電話産業のように、競争による値下げ、
価格の決定権が消費者に移る日はまだまだ先でしょう。

郵便はさておき、保険、貯金の手数料は異常に安かったです。
カードの再発行手数料は無料、残高証明書の発行手数料は民間の10分の1、
国際送金も割安。
しかし、今はすべて銀行に足並みを揃えられました。

メリットといえば、法人税をきちんと払うようになることくらい。
その税金もちゃんと国民に還元されればいいのですが・・・。期待できませんよね。

結局、一番郵便局を身近に利用してくれていた方々が損をしているのです。

我々、民意が決めたのだからしょうがないのでしょうが、
なんだか踊らされた気がします。

そして職員も、民意(国民)が決めた民営化にもかかわらず、
窓口でお客様からお叱りを受けるのです。

民営化前は、「公務員だから融通がきかないんだ!」と怒られたことがあります。
そう今と逆の怒られ方です。

しかし、融通が利いていたのは、銀行より郵便局の方なのです。
身近な郵便局は、昔は近所の方は証明書不要、面識で口座を作ってました。
架空であるはずがありません、どこそこのOOさんなんて、すぐにわかったのですから。

しかし、一部の悪い人間のために法律ができ、形式ばかりが重要視されました。
まあ、その分、マネーロンダリングなどの犯罪組織への対応は進んだのですが。

民営化を争点とした選挙のときは、
僕も正直、辞めた後だったので、民営化はプラスだと思っていたのですが・・・。

立場によって考えは違うとは思いますが、
かな~り深い問題だと思います。

辞めた今でも、職員はかわいそうだと思うし、
常連さん(特にお年寄りが多いので)や、過疎地の方が不憫に思います。

みなさんのお考えはどうでしょうか?
身近な職員の印象や、利用頻度によって見方はさまざま。
僕はたまたま、一生懸命働いている職員を何人も知っているし、
自分自身、お客様を大切に思い働いていたので、転職したとはいえ、
もしかしたまだまだ職員寄り、職員びいきの意見かもしれません。

僕の意見を押し付けるつもりはありませんので、
あくまで一参考意見として考えていただければと思います。
せっかく、こういった経験(窓口の最前線で働いた)があったので、
一度はこういったことをテーマにしてみたかったのです。

 
 



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コメント 7

内部のことを知っている人だからこそ、書ける事ですね。
興味深く読ませていただきました。
by (2008-01-12 09:41) 

kaoru

おはようございます。
窓口の最前線で働いたからこそのテーマですよね。
学生時代に郵便局でバイトしていましたが
自分の与えられた仕事をこなすのみで内部事情は何一つ
知らなかったので教えて頂けて勉強になりました。
旅に行くと旅先からお友達に絵葉書を出していますが
風景印もまた旅の思い出になるって素敵ですね。
by kaoru (2008-01-12 11:29) 

僕

のんべいキャサリン 様

ありがとうございます。

自分が転職したのは3年前ですので、
若干、視点がブレているかもしれません。
地域によっても、公務員気質が抜けていない社員も多いようですし。
良い方向に向かってくれるといいのですが。


kaoru 様

僕も、もともとは郵便局でアルバイトをしておりました。
そのときは配達の外勤でしたが、仕事にしたのは内勤。
しかし実は内勤の方がよっぽどきつかったです。

お金を合わせるプレッシャー、手続きの正確性、法律の遵守、
接客、ビジネスマナー、そして営業成績。
なにより、郵便、貯金、保険と3つの窓口のローテンション、
質も量も大変でした。
by (2008-01-14 01:14) 

郵便屋さんってなんだか
地域に密着してるってかんじがあるんですが
民営化したらもっと行き届くのかな?
ちなみに私はすでに軽いトラブルがありました。
民営化のせいだとは思いませんが…
良い方向にむかうといいですね
by (2008-01-14 21:13) 

お茶屋

巨大ヒルズポスト!!にびっくりです・・・^^;
by お茶屋 (2008-01-16 14:45) 

僕

まめ助の母 様

そうですね、
利用者としても元職員としても良い方向に向かうことを祈ります。
些細なことでもトラブルは嫌ですね。


お茶屋 様

この巨大さ、実際見ると圧巻です。
みなさん写真取り巻くってましたが、
自分もミーハー・・・取り捲りました(笑)
by (2008-01-18 00:55) 

おみ

全て丸く納まる、ってなわけにはいかないようです。
私は単に利用者としてしかつながりがありませんでしたが、
歩いてすぐの所にある郵便局に、
子供の頃はよく貯金しに行ったものです。
そして、小包がいつになったら着くものか、
やきもきしたものです。
ヤマトで宅急便を使用する時に、
『いつ届くかが分かるナンてすごい!』と思ったものです。

結局のところ、消費者は自分にとって良いトコロを敏感に
探りあてている、のかなぁ?と思うのです。
by おみ (2008-01-26 23:44) 

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